古処会 第四回
「裁判員制度の功罪と捜査の可視化問題を中心として」
弁護士法人ひまわり法律事務所 弁護士
松尾 敬次 氏
第4回古処会聴講録
朝高25回 小田恭裕
7月6日(金)、第4回古処会が八重洲のコンベンションAPで行われた。 梅雨らしい降ったり止んだりの空模様のなか、約50人の参加者があり、会場は満席の盛況であった。
今回の講師は、弁護士の松尾敬次先輩(朝高7回)。「裁判員制度の功罪と捜査の可視化問題を中心として」と題され、制度導入後3年を経過した裁判員制度と、最近とくに喧しい捜査機関における捜査の可視化問題についてお話いただいた。
前半は最高裁発行のリーフレットなどを駆使して、裁判員制度について広範に説明いただいた。
裁判員に選ばれるのは8千人に1人の割合だそうで、参加者の誰も未体験であった。制度そのものは5月に導入3年を迎えマスコミでも広く報じられたので割愛するが、市民が選任されることで用語が平易になり分かりやすくなった、また、事件の滞留が改善されたというような「功」の一方、守秘義務が負担となり、重罪評決(とくに死刑)を行った裁判員の心の負担などの「罪」についても実感を持って話をされた。裁判員という素人を相手に弁論を行うため、以前に比べ演技力が必要になったというお話しは、まさに現場感覚なのだろうと思った。
後半は可視化の問題であった。これについても功罪両面はあるものの、頻発する「行きすぎた捜査」や証拠改竄などを受け、可視化の流れは不可逆的に進むであろうとのお話であった。これは想像であるが、次々に検察の問題点が明るみに出るのは、近年になって検察がおかしくなったのではなく、隠れていた闇の部分が表面化してきたのであろうと思われる。
ある意味で、締めくくりに話された法曹界の問題が、法学部出身である私にとっては知ってはいたが一番切実な内容であった。つまり法曹人口は増大しており、難関の司法試験を潜り抜けてはみたものの職に就けない浪人が増えているのだ。優秀な人材が逃げ質的な低下を招けば国家・市民にとって大きな損失だ。
そんななかで米国型の訴訟社会がじわじわと進行しているとすれば日本人の倫理観や美徳意識を蝕む問題ではないだろうか。
最後になりましたが、わざわざ徳島県から上京いただき、貴重なお話をお聞かせいただいた松尾先輩に、改めて感謝申し上げます。了
——————————————————————————– 第4回 古処会 講 演「裁判員制度の功罪と捜査の可視化問題を中心として」弁護士法人ひまわり法律事務所 弁護士 松尾 敬次 氏
略 歴
・昭和30年 3月 朝倉高校卒業(7回卒)
・昭和30年 4月 早稲田大学第一法学部入学
・昭和34年 3月 早稲田大学第一法学部卒業
・昭和34年 4 月 山一証券株式会社入社
・昭和39年11月 山一証券株式会社退社
・昭和42年 9月 司法試験合格
・昭和45年 4月 弁護士登録・弁護士開業
・昭和58年 4月 徳島弁護士会会長・昭和58 年12月 徳島県収用委員会会長
・昭和61年 4月 徳島弁護士会会長・平成 2年 4月 日本弁護士会連合会副会長
・平成 2年 4月 四国弁護士会連合会会長
・平成12年 4月 徳島調停協会連合会会長
・平成17年 4月 徳島県包括外部監査人
・平成18年11月 旭日中授章受賞
・平成18年11月 暴力追放栄誉金賞受賞
・現在 徳島文理大学 講師
「講演内容」
☆ 松尾敬次氏は、山一証券徳島支店に勤務時に退職して、一念発起、難関の司法試験に挑戦して見事合格、昭和45年に弁護士開業され、現在も現役としてご活躍中です。この間、日本弁護士連合会副会長等重要な役職を歴任されると共に、平成18年には旭日中授章受賞の栄誉に浴されています。☆ テーマは、現在までの42年間の弁護士活動をベースに、司法界で私共に身近な課題である「裁判員制度の功罪と捜査の可視化問題を中心に」講演いただきます。
① 日時 平成24年年7月6日(金) 受付開始18:00☆ 18:30-19:20 講演会 ☆19:30-21:00 懇親会
② 場所 講演会「コンベンションルームAP東京八重洲通り」11階O会議室 (KPP八重洲ビル) (中央区京橋1丁目10番7号) 03-6228-8109 懇親会 「同上、11階M会議室」http://www.ap-tokyoyaesu.com/info/access.html#access
③ 会費 講演会費 一般1,000円 学生無料 懇親会費 男性3,000円 女性・45才以下2,000円 学生無料
④ 問い合わせ 東京朝倉同窓会事務局 kunio.noguchi@gmail.com