東京朝倉同窓会

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古処会 第五回

第5回    「教育の歴史と現状について」

玉川大学大学院 教育学研究科 教授

山口 意友 氏

講 演

「教育の歴史と現状について」

玉川大学大学院 教育学研究科 教授

山口 意友 氏

略 歴

昭和54年 3月    朝倉高校卒業(31回卒)

昭和58年 3月    熊本大学文学部哲学科卒業

平成 2年 3月    九州大学大学院博士課程修了

平成 6年 9月まで  この間、筑紫女学園短期大学・九産大学非常勤講師を勤める        

平成21年 3月まで  この間、純真短期大学の講師・助教授・教授を歴任

平成21年 4月    玉川大学教授(教育学部教育学科通信教育部)

平成24年 4月    玉川大学大学院教授(教育学研究科)、現在に至る

「講演趣旨」
☆山口教授は日本の教育の改革の為に何が必要かを発信続けられています。

「教育の歴史」について
戦後教育を受けてきたものにとって、「戦前の日本は封建的で悪、戦後は民主的で善」というような認識がある。では、教育においてはどうなのか。戦前の教育を支えてきた「教育勅語」「修身」を悪として排除するのが一般的である。だが、戦前と戦後の教育の間に「断絶」を見ることは正しいのか。阪神大震災や東北の大震災の時、諸外国から「なぜ日本では略奪や暴動が起こらないのか。なぜ、きちんと列をなして配給を待っているのか」という疑問が、尊敬の意を込めて投げかけられた。その理由は、戦前から代々続く日本の「伝統的な道徳」を知らず知らずのうちに現代人が受け継いでいるからではないのか。戦前と戦後の道徳教育を「断絶」と捉えるのではなく、「継続」と捉えることによって、我々は「歴史に学ぶ」ことの必要性を再吟味しなければならない。
「教育界の現状」について

誰もが受けてきた義務教育であるが、教育界には世間と異なる「常識」が存在する。そしてそれは特に「道徳教育」において顕著に表れる。「生命尊重」「自然を大切に」「男女は平等」「やれば必ずできる」などのようなきれいな言葉を連発するだけで教師は自己の言葉に陶酔し、その背後に隠された矛盾点を考えようとしない。人間の本音を明らかにする問いかけが全くなされず、表面上のキレイゴトのみが闊歩する教育界の改革が急務である。


☆著作紹介

・『平等主義は正義にあらず』:葦書房(1998年)    

・『正義を疑え!』:ちくま新書(2002年)

・『反「道徳」教育論』:PHP新書(2007年)   

・『教育の原理とは何か』:ナカニシヤ出版(2010年) 等多数

第5回 古処会 聴講録

朝高34回 橋本 公宣

  10月12日、朝高31回卒で玉川大学の山口意友教授に講演を頂いた。「教育の歴史と現状について」というテーマからして非常に硬い内容かと思っていたが、講演が始まるなり、その説得力のある内容に聞き入ってしまい、あっという間の1時間だった。以下概要のご紹介と感想を述べてみたい。

   まず冒頭に、今日のテーマの基礎知識として、教育とは何か?について。教育の目的は、「人格の完成」(教育基本法第一条)であり、言い換えれば「生きる力」を身につけること。=知育、徳育、体育・食育の3つの要素を備えることで、人としての「生きる力」を身につけることであると説明された。

   次に、教育界の現状について。現在の教育界では、学校では知識は教えるが、道徳は家庭の仕事、との考え方が本音として存在しているとのご指摘。むろん家庭の役割を全否定はしないものの、現在の教育界における道徳教育が半ば形骸化している現状に対して、教育者たる教師の有り様としてそれでいいのか?との警鐘である。

     山口教授によれば、例えば「『生命尊重』『自然を大切に』『男女は平等』などの「きれいな言葉」を連発するだけで、教師は自らの言葉に陶酔し、その背後にある矛盾点を考えようとしない」とのことである。そうだとすれば大きな問題だと思う。現実の社会には矛盾が溢れており、または答えのない中で自ら進むべき道を切り拓いていく場面は多い。

     そうした矛盾や異なる価値軸が対立する場面において、どう考えるべきか?それは何故か?こうし  た問題を自分の頭で考え、昇華させていくことで、本物の道徳観や倫理観、更には人としての生き方、まさしく「生きる力」に繋がって行くのではないか?と考えさせられた。

   最後は戦前の教育と戦後教育、または教育勅語と教育基本法との関係性についてのお話で、教育の歴史に学ぶことの意義についての問題提起がなされた。

   残念ながら現在の教育現場では両者は「断絶」されており、多くの日本人の中にも、明治以来の教育や教育勅語は悪、戦後の教育基本法とは相反するものとの思い込みがあるのではないか?との問いである。

   実際には、昭和22年の教育基本法成立の際、日本政府は教育勅語を論語等と同様の道徳書として、教育基本法を法令として、両者を共存させていたが、昭和期の軍部による政治的利用の歴史からその後GHQの命令により教育勅語はやむなく廃棄されたという事情があること、また教育勅語や修身の内容自体は我々日本人にとって今日においても倫理観・道徳観の基礎として脈々と息づいているものが多いということである。

   世の中が大変なスピードで変って行く現代ではあるが、我々日本人にとって変えてはならないもの、日本的美徳や道徳観の基礎として、教育勅語や戦前の教育の歴史に学ぶべきではないか?という問題提起を以って締めくくられた。

   全体を通して、単なる持論や問題提起の域に止まらず、山口先輩の義憤、公憤とも言える熱い情熱がガンガン伝わってくる講演であったと思います。大変意義深く貴重なお話を聞かせていただいた山口先輩に、改めて感謝を申し上げたいと思います。有り難うございました!



第5回古処会のご案内

① 日時 平成24年10月12日(金)  受付開始18:00
  18:30-19:30 講演会  ☆19:45-21:00 懇親会

② 場所 「コンベンションルームAP東京八重洲通り」11階O会議室(KPP八重洲ビル)

懇親会 「同上、11階M会議室」

③ 会費 講演会費 一般1,000円 学生無料     懇親会費 男性3,000円 女性・45才以下2,000円 学生無料

④ 出席申込み・問い合わせ 東京朝倉同窓会 野口事務局長宛  申し込みは 以下のアドレスをクリックして、必要項目(件名:古処会氏名・卒年)を入力願います。e-mail : kunio.noguchi@gmail.com申し込み期限:平成24年9月25日(火)